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深海性の超稀少種:リュウグウサクラヒトデ

先日のヒトデの論文を届けてくれたという記事がありました。
その論文の1つに

リュウグウサクラヒトデ『A rarely encountered oreasterid sea star,Astrosarkus idipi (Echinodermata,Asteroidea),newly recorded from Japanese waters』
というのがありました。

管理人的に訳すと「滅多に見かけないAsterosarkus idipi(*1) (棘皮動物門,ヒトデ綱)、日本近海での新しい記録」です。

で、この論文(英語)で紹介されているAsterosarkus idipi にはこのような和名が付けられています。

     【リュウグウサクラヒトデ】

竜宮の桜…非常に素敵な和名です。
自分も昔はヒトデの研究で色んなヒトデを見たり、調べたりしましたが、こんな素敵な名前(和名)は初めてです。

13冊の論文を届けてくれて、そして、この論文の著者(*2)である『木暮 陽一』博士に、この名前の由来を尋ねると次のような返信がきました。

リュウグウサクラヒトデの命名は私(木暮博士の事です),由来は原著論文中では下記のように説明しています。

Etymology. The new Japanese name Ryugu-sakura-hitode is derived from the words ryugu (a legendary palace or paradise in an abyssal sea), referring to the deep inaccessible habitat of this species; sakura (cherry blossoms), indicating the petal morphology; and hitode (sea star).

要するに,竜宮城のように深く,行くことが難しい場所に咲く,サクラの花弁外形に似たヒトデという意味です。確かに水深100mを超すような深海岩礫底は,トロールやダイビングではアクセスできず,神秘の海域で,まだまだ未記載種の宝庫と思います。リュウグウサクラヒトデのような大型で目立つ色彩のヒトデが21世紀まで記載されなかったのは,ひとえにその生息場が採集困難なところだからでしょう。

私は愛するヒトデたちに,その種の特徴を生かしつつ,できるだけ馴染みやすく綺麗な名前をつけてあげたく心がけています。間違っても何とかモドキなんていう可哀想な名前はつけません。その意味でリュウグウサクラヒトデは満足いく命名でした。昔話の竜宮と琉球は,音が似ていることから,共通のルーツがあると思います。今回のヒトデも琉球列島で記録されたことから,リュウグウとリュウキュウを掛け合わせた名前にもなっているのですよ。沖縄美ら海水族館で「リュウグウサクラヒトデ」の展示プレートが出たときは,感激したものでした・・・・
リュウグウサクラヒトデリュウグウサクラヒトデ口側
   写真の白線はスケールバーで50mmです。

 

 

自分は既にヒトデの研究からは退いているのですが、今も日夜ヒトデの研究をされている方が、このような想いでヒトデに名前を与えていると知ったからには、ヒトデマニアの管理人としてはWebでのヒトデ普及をサポート(?)してあげよう!と思ったからです
(`・ω・´)ゞ ☆ミ

深海は地球の中にある宇宙と表現する人がいるように、まだまだわかっていない事だらけです。
そんな未知なる深海で綺麗なピンクのリュウグウサクラヒトデ…

リュウグウサクラヒトデについて少しまとめると…

 

アメリカ領サモアで採集されたリュウグウサクラヒトデ

  • このヒトデはパラオや米領サモアなど限られた場所からしか知られない深海性の超稀少種。
  • 標本も世界に数個体、もちろん、日本では初記録。
  • 沖縄美ら海水族館が採集し,同館でしばらく飼育展示されていた。
  • 産地は久米島近海,水深200mのサンゴ礫底で,潜水艇無しでは到底,発見や採集ができなかったヒトデ。
  • 本種はマンジュウヒトデほどの大きさだが骨格がほとんど退化消失しているという顕著な特徴がある。

 

また、メールの返信と一緒に、リュウグウサクラヒトデの採集動画を送って頂けました!
これは…超マニアック!!(*´▽`*)
という訳で最後にこの動画を紹介です。
柔らかそうなリュウグウサクラヒトデがプニッとマニピュレータで捕まれています。

リュウグウサクラヒトデの採集風景
動画:「(株)新日本海事所属ROV:はくよう2000にて採集」
深海のリュウグウサクラヒトデ深海のリュウグウサクラヒトデ2

メールの返信に【愛するヒトデたち】と書いてあるように、博士や研究者の方は本当に自分の対象を慈しみを持って研究されています。
さすが、さすがです。。。

 

*1
Asterosarkus idipiというのは種名という分類に使われる名称です。
ヒトで言えば、Homo sapiensになります。
*2
この論文は3名での共著です。
Yoichi Kogure ,Atushi Kaneko and Christopher L. Mah

ちなみに、木暮博士は現在、ヒトデ分類学を専門にしており、日本周辺のヒトデ類を網羅的に収集、記載しております。

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